「あなたは、今、幸福じゃないのでしょう?」

大分前になりますが「池田理代子さん」の作品(どちらかと言うと、大人の女性が読む内容の原作)の言葉に、打ちのめされた経験が有ります。

本題に入る前に、長い前置きになりますが、この本のあらすじを知らないと、私の言いたい結論が理解不能になるかな?と思えますから、ざっとその内容を。そして、今、手元にその本は無いですし、言葉の一言一言は同じじゃないですが、殆ど内容は一緒のはずです。

この本の主人公は、ご主人が若い女性と浮気しているのに気がつく、小学生低学年の息子とまだ小さい娘を持つ女性です。

最初は「浮気よ~」と旦那様に対して気がつかない振りをしているのですが、ある日ご主人が「浮気じゃ無い。本気だ。別れてくれ」と土下座せんばかりに訴えます。慌てて怒り狂う主人公の女性。「子供はどうするの。私はどうなるの?絶対に別れません」と言い張る主人公に「何でもするから別れてくれ」とその言葉を繰り返す旦那様。

そんな時に、団地内の噂が。なんでも同じ団地の仲間だった奥さんがダブル不倫をした末に、小学生の息子を置いて駆け落ちしていた。それだけに留まらずに、その団地の目と鼻の先の町で「喫茶店」を駆け落ちした人と経営していると言うのです。

大騒ぎになる団地の仲間。

「許せないわよね~。子供がかわいそう。絶対に、許して良い事じゃない。皆で思い知らせましょう!皆で糾弾しに行かない?天誅を加えるのよ」と相談。

集団で押しかけて、吊るし上げ!をしようと言う計画が出ます。本当は自分の頭のハエを追うことで一杯だし、その駆け落ちした奥さんとは仲良しだった主人公なので、最初その話が出た時は乗り気になれなかった。

ところがその駆け落ちした人に「妻も子供も居た」と言う話を聞き、ご主人から「別れてくれ」と言われると「捨てられる自分」をその「一緒に駆け落ちした人の残された奥さん」とをリンクさせてしまい、怒りの矛先を「自分の友達であった駆け落ち奥さん」に向けてしまい、同行する事にしてしまいます。

自分の経営する喫茶店で、イキナリ見知った顔の知人達に逢って、バツの悪い思いをするも「お客」として、そつなくもてなす駆け落ちした奥さん。

団地の奥さんの目の前に居るのは「前より垢抜けて数段綺麗に、愛されている自信に満ち溢れた人」で、期待していたような「罪の意識におののいて、やつれた薄幸そうな奥さん」はいなかった。

拍子抜けした団地の住人達は口々に聞こえよがしに「よく出来るわね~。いけしゃ~しゃ~と」「恥かしくないのかしら。男に狂って家庭捨てて」とか「私なら嫌だわ~。出来ないわ~。そんな罪深いこと」「いい年して、男に狂ってみっともないし、不道徳よね~」と聞こえるように言い放つ。

確かに、彼女達の言う事は正論かもしれない。でも、その喫茶店の女主人は、顔色一つ変えずに接客を続ける。「もっと慌ててバツの悪い顔をする」と思っていた団地の人々は、ことごとく外れる自分達の予想に苛立つ。

でも、そんな時ドアを開けて、もう一人の女性がつれて入ってきたのは、その女主人の「家に残してきた男の子」

小学校の上級生にもなれば、自分の母親が「男の人を作って逃げた」と言う意味の本当の意味すらなんとなく判り、それ故に余計に悲しく悔しい思いをしているはずの息子。

と同時に去っていった母親も恋しいはず。そんな息子を、ワザワザ連れてくる人々。「何処をどう痛めつければ、その人が参るか判っている」残酷な仕打ち。

息子は前よりも綺麗になり「女として輝いている母親」の姿を見ると、何も言わずに店を飛び出して行く。後を追いかける母親。

追いつかずに戻ってきた女主人は、その時、やっと感情を爆発させる。

「あなた達がしている事は、サイテ~~だ。私に対して意地悪するのは良い。でも、息子まで連れて来る事は無いじゃない」と怒りに声を途切らす女性に「あ~ら、ご自分がした事でしょう?可哀想な息子さんを置いて、男作って出て行ったのは自分でしょう?我々は、あなたの『罪深さ』を判らせてあげたいと思っただけよ。我々は、正しい事をしているのよ。あなたに、罪を感じさせて反省して貰おうと思ってね」と。

そう。確かに「駆け落ちした人」は悪いかもしれないし、彼女達の言う事は正しいかもしれない。ですが、私が「打ちのめされた言葉」は次の言葉なんです。

その奥さんは、他の人には目もくれずに、主人公に言います。

「XXさん、あなたは今もしかして、不幸なんじゃない?だって、あなたは、ここに居る人のように『自分は正しいから、正義のために、間違っている人を糾弾するのに、手段も言葉も選ばず!と言う事を平気で出来る卑しい人』じゃなかったはず。

でも、もしかしたら今のあなたは、ご自分も幸福じゃないのから、この人達と一緒になって私を糾弾するのじゃない?

私はね~、何を言われても平気よ。だって私にゴチャゴチャ言ってるあなたたちの心の中の声『羨ましい~羨ましい~私も同じ事したい。でも、世間体が有るから出来ない~~』と言う声が聞こえてきますからね。あなた達は、自分達だって同じ事をしたいはず。でも自分じゃ出来ないから、『自分がしてしまった事を軽々とやってしまった私』が羨ましくてしかたない。でもそれも出来ないから『人の道に外れた事をした彼女は不幸になって罪の意識におののいてヤツレテイルに違いない』と思い込んで、それを確認するために、顔を見に来たのでしょう?おあいにく様、今、私は幸福よ。

でも、XXさん、あなただけは違う。あなたは、そんな人じゃなかった。可哀想に、あなたは不幸なのね~、だから『無意識のうちに、自分よりも不幸な人の顔を見たい』と思ったのじゃない?可哀想に。でも、あなたほどの人ならば、冷静になればきっと良い道が見つかるはずよ」
と言います。

呆れる団地の人々。ですがそう言われた女主人公。彼女の言う事が「図星」だった事に気が付きます。と同時に、「もっと惨めになりたくない」と言う思いから、旦那様と別れる決心をします。

この話はここで終わります。

私は「自分が不幸だから、人の『言動が気になる』そして『余計に理不尽だと感じて、許されないと正義感に燃えてしつこく糾弾する』姿勢を糾弾している人から「本当は羨ましいのでしょう?」と言う言葉に打ちのめされました。

「そうかもしれない」と妙に納得してしまったのです。「本当に、心のユトリが有るのならば、そんなに居丈高に人を罵る事は出来ないのじゃないか?」と思ったのです。

長くなりますので、って、今でも十分長いか~

一旦、切りますね。

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